Sunday 20 December 2015

Star Warsブームに便乗して、名詞の性質から見える世界の捉え方を説く。

宇宙戦争たち

この週末、Star Wars: The Force Awakensが封切られ話題を呼んでいるが、そこで warsが複数形であることに目をとめている人がどれだけいるだろうか?

もちろん、今回で 7作目を数えるこの超大作シリーズでは、どのエピソードにおいてもドンパチやっているわけなので、warsと複数形になっていることに疑問を感じることもないかもしれない。

だからこそ、せっかくの機会だから(ということにしてしまって)、今回の記事では warと、その対極をなす peaceという英単語の振る舞いに注目し、単数・複数=つまりは可算・不可算という英文法の規則が、実は「ことばを通じて人間が世界をどう認識しているのか?」という姿を如実に映し出すものであることを見ていくことにしよう。

War: 可算用法も不可算用法もあり

まずは warから観察していく。

Star Warsという映画タイトルからも明らかである通り、warは個々の戦争を捉えて可算名詞として使うことができる:

(1) to win/lose a war 戦争に勝つ/負ける
(2) Britain fought in two wars in the 20th century.
英国は20世紀に2つの戦争を経験した。

一方で、「戦争状態」のことを表す不可算名詞としての用法もある:

(3) declare war against A A(相手)に宣戦布告をする
(4) The country was at war with its neighbours.
その国は近隣諸国と戦争状態にあった。

Peace: 不可算用法のみ!

これに対し、peaceという単語は不可算名詞としてしか用いられることはない:

(5) bring peace to A A(国など)に平和をもたらす
(6) maintain peace 平和を維持する
(7) The countries have been at peace for more than a century. 
その国々はもう一世紀以上も平和であり続けている。

可算・不可算名詞の考え方とは?

Warpeaceも、ある国や地域の置かれる状況(=形のないもの)を表す抽象名詞として、不可算名詞で使われることは共通している。では、なぜ warだけが可算名詞としても振る舞うことができて、peaceはできないのであろうか?

このことを説明する前提として、まずは英語の可算・不可算名詞の考え方を押さえておく必要がある。

可算名詞→他と切り離して区別できる・分解可能

典型的な可算名詞 table (a table / two tables...)で考えていくと、まず tableというものは、その形から他のもの(chairdish, glassなど)と区別することができる。更に、a tableを分解すると、the (table)top(天板)と the legs(脚)に分かれる。

不可算名詞→特定の形を持たない・分解不可能

他方、典型的な不可算名詞 waterの特徴を見れば、「方円の器に従う」と言うように、特定の形というものを考えることができない。また、a bucket of water(バケツ一杯の水)から a glass of water(グラス一杯の水)を汲み出し、そこから a drop of water(一滴の水)を吸い出したところで、量は変わっても「水は水」であり、その性質は一切変わるものではない。

人間は「ことば」を通じて warpeaceをどのような「もの」と捉えているのか?

以上を踏まえていくと、a warとは、たとえそれが百年戦争のように長い期間に及ぶものであったとしても、始まり(開戦)と終わり(終戦)によって歴史の時間軸上で「線分」として切り取られる(=形を想定できる)ものであり、その内部構成は「戦局」と呼ばれるように、様々な状況からなる出来事として捉えられていることになる。
したがって、wartableのように「数えられるもの(物体)」として扱われうるのである。

対して peaceの方は、悲しいかな世界には束の間の平和しか訪れないような現実がある国・地域も存在するが、それでも英語ネイティヴの世界観としては、均質的で、始まりも終わりもなく恒久に続くものと考えられているのである。
よって、peacewater同様に「数えられないもの(物質)」のようにしか扱われないということになる。

この2単語の捉え方の違いは、「期間」を表す duringと共起できるか?という点においても現れてくる:

(8) Many innocent civilians were killed during the war.
戦争中には多くの罪のない市民が命を落とした。
(9) *There was plenty of food to eat during (the) peace.
平和な間には食べるものが豊富にあった。

可算名詞の warは、時間軸上で他と区別できるという性質が想定されているため、「それが起こっている間」として表現することも当然可能である。
しかし、不可算名詞の peaceでは、時間軸上の境界が想定されていないので、英文法の枠組みの上では、duringを用いて「平和な間に」と表すことはできない…少なくとも、現代英語の用法では。

★Here is the Path to Wonderland☆

英文法の用法に変化が生じ、peaceが可算名詞に(も)なって、 'during (the) peace'などという表現が可能になってしまう…
そんな世界は作ってはならない。

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