Monday 12 December 2016

「下手になるための練習」をしていないか?

まずは下のサッカー(シュート練習)動画をご覧いただきたい。
※ 1:48-2:40のあたりのコーチングに注目!



サッカーファンの間で俗に「宇宙開発」と揶揄されるような、ゴールの枠を大きく越えて外れてしまうようなシュートが 3回続いたところで、コーチがすかさず流れを止め、"You must stop and reassess what you're doing"「一度中断して自分のしていることを再検討せよ」と指導に入っている。

続けて "All you're doing is practicing to miss the goal. It's a habit. The more times you do that, it becomes a habit."「(同じように漫然と練習を続けていても)ゴールを外す練習をしているに過ぎない。習慣の問題だ。外せば外すほど、それが習慣化されてしまう。」と注意喚起し、具体的にシュート時の軸足の踏み込みについての技術的アドヴァイスに進んでいる。

この一連の指導の流れというのが、ガリレオの目には非常に美しく見えた。

とりわけ "The more times you do that, it becomes a habit."は英語学習に対しても示唆に富んでいる。例えば「音読」を勧める教員は数あれど、英語らしい発音の"枠を外した"まま練習を続けている生徒の活動を「止めて→アドヴァイスを与え→再開」というサイクルを徹底している者がどれだけいるか。

選手/生徒としては、プレー/活動を止められて指導を受けることがない限り、「今日もX時間の練習をこなした」と考えるだろうし、ともすれば満足感を得て「続けていくことが上達につながるはずだ」と信じ込んでしまう可能性も高いであろう。しかしその実態は「下手になるための練習」であり、ダメなパフォーマンスを習慣化しているだけの時間の浪費に過ぎない可能性がある。

本来は指導者の側により深い自覚があって然るべきことではある*が、学習者の側としても自身の行なっている学習が「下手になるための練習」担っていないか、「上達するための練習」にするには何が必要か、といったことを "stop and reassess"してみると良いだろう。

*だからこそ、日常生活ではスポーツと縁遠いガリレオではあるが、個人的に好きなサッカーを中心に、指導のヒントを得るべくこうしてアンテナを伸ばしているわけである。「下手にするための練習」を放置するというダメな指導自体も、続けていると習慣化されてしまう。


★Here is the Path to Wonderland☆
【関連】ガリレオ研究室「生徒のレビュー」ページ
しろさんのレビューに対する「ガリレオより:(音読学習について)」も、是非あわせてお読みください。



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Wednesday 7 December 2016

【ガリレオ研究室】ビリゆみ第2話「ビリゆみ家出する」公開!

■ビリゆみ家出する

ビリゆみの家出

ビリゆみ第2話は、ガリレオが自身の過去の Skypeレッスンを振り返った際、大きな反省材料となる時期の記録となる。最終的には「ビリゆみの家出」という事件をもって気付かされたガリレオの誤謬を、恥を忍んで記すことにより、初心を忘れず今後の自らのレッスンを省みるための指針として定めておくとともに、当時のゆみこちゃんへ、せめてもの罪滅ぼしをしたいと思う。

■「ビリゆみ」とは?

ガリレオ研究室のコンテンツのひとつ。

ガリレオの Skype英語レッスンの実践研究のまとめであり、同時に英語学習の道をさまよい続けていた学習者の成長を記録し、改めて分析・検討を行う場でもある。

「ガリレオ先生」の名付け親であり、2013年以来モナコの地よりガリレオの Skypeレッスンを受講し続けてくれている、更家由美子さん(デューク更家夫人)の物語を、あなた自身の英語学習の海図として役立てていただきたい。

なお、記事内では更家さんのことは、普段の師弟関係の間で呼んでいる「ゆみこちゃん」と親しみを込めて表記させていただいている。また、ページのタイトルについては深く追求せずに楽しんでもらいたい。


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Friday 2 December 2016

高校2年生を英検準1級合格に導いたリーディングの授業



前回の記事で紹介させていただいた、英検準1級に合格した生徒(mirioさん)が、苦戦していたリーディング問題の壁を突き抜けるきっかけとなった指導のエッセンスを、動画講義形式でシェアします。

【内容】

  1. 「脳内リーディング」を身につけて、論理構造を整理して読めるようになろう!
  2.  "the serpentine columbine", "trichomes"...知らない単語が出てきても、「文書全体の流れ」を見失わずに読み解くには?
  3. 出題者の仕掛けるトラップに引っかからず、正解の選択肢にたどり着くために必要な考え方とは?
解説する問題文は、以下のリンクより英検サイト掲載の過去問をご利用ください :
http://www.eiken.or.jp/eiken/exam/grade_p1/pdf/201601/2016-1-1ji-p1kyu.pdf
(p.7の問題 The Serpentine Columbineを題材に解説しています。)




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Thursday 24 November 2016

【本物の高校英語】英検準1級合格!

ガリレオ研究室の学生向け Skypeレッスン「本物の高校英語」を継続受講してくれている生徒が、このたび英検準1級に合格しました!(ちなみに今年5月の記事で、英語弁論大会の学年代表に選ばれた際にも紹介させていただいた生徒です。)

8月半ばから英検対策の授業を始め、今回も直前期には部活の大会などの忙しいスケジュールをぬって週3回の集中受講をしてくれるなどの努力を重ね、回を重ねるごとに指導内容を確実に自分のものにしていってくれた成果が現れたものだと感じていますo(^_^)o

■一次試験対策

一次試験対策としては、まず論理関係を押さえながら長文を読解する力の養成に集中的に取り組んだ。

具体的には…
  • Google Driveの Web資料で本文を色分けしながら、筆者の主張 vs. 対立意見第3の視点(およびそれぞれの抽象的な要約箇所と具体例)を整理した読解
  • 上記の力をもとに、馴染みのない内容や専門用語が出てきても文脈から内容を把握していく方法(授業で扱った過去問には、serpentine columbineという植物に関する文章があった。セイヨウオダマキというらしいが、ガリレオも知らない単語である…が、正しい読解力があれば全く問題にならない。)
  • 本文内容と選択肢の照合のポイント:内容がいかに要約され、言い換えられているか?
といったポイントを重点的に指導していった。当初は、典型的な間違いのパターンとして「部分的には本文に現れている情報を含んだ選択肢を選んでしまう」という傾向が見られたが、正しい読み方の勘所を押さえられるようになるにつれ、そのような出題者が張り巡らせたトラッブに引っかかることなく、適切な選択肢を見抜けるようになっていった。

とりわけ英検準一級以上では、このように論理展開を踏まえた読解力が、結局はリスニング・英作文、さらには二次試験へと繋がる基礎となっていく。今回はこの基礎力養成に数回のレッスンをかけて丁寧に指導が行えたことで、ライティング添削やリスニング対策はポイントを絞って進めることができたと自負している。

実際、生徒もリーディング対策の効果を特に実感してくれていたようで、一次合格時には以下のようなメッセージを送ってくれた:
準一級の一次試験の合否を確認したところ、合格していました!
先生のポイントを押さえた、リーディング対策のおかげです。
中間テストが終わったら、二次試験の対策をお願いしたいです。
よろしくお願いします!!

■二次試験対策

ガリレオの信条としては、英検の二次試験というものは、一次試験に合格できる実力を持った受験者が「ノーマル」に面接で話をしてくれば、当然合格を手に入れられるものと考えている。(ただし一次試験の合格という結果が、例えば「頻出単語の丸暗記」や「英作文のテンプレート解答案の丸写し」による点数稼ぎで得た実力不相応なものであれば事情は異なるが…ガリレオ研究室の生徒に関しては、その心配には及ばない。)

それを踏まえて、二次試験対策のアプローチは「合格レベルのナレーション・応答を確実にやっていく」という方針で指導を行った。二次試験に関しては、レッスン後に送っているレビューのやり取りの一部を紹介するので、実際の指導を垣間見てほしい:
ガリレオ→生徒: 二次試験対策 1回目のレッスンレビュー
やはり Speakingのテストなので、大切なのは即興英文構成力です。なので原稿を書いて用意するのではなく、頭の中でその場で英文を作って、声の出せる状況であれば実際に口に出して練習する…というやり方で繰り返した方が望ましいでしょう。これについては、同じテスト問題で何回か繰り返し行っても良いと思います。
ガリレオ→生徒: 本番直前
本番では、ノーマルに対話してくれば充分です。「ノーマル」とは、昨日のリハーサルでできたパフォーマンス。ここはイメージをしっかり固めておいてください。どんなテーマが来ても、自分が自信を持って使える表現に落とし込んで、メッセージレベルで伝えきること。瞬時の判断力は大切になりますが、Well… / Let me see… などで時間を稼いだり、No, I mean…で方向転換してもまったく問題ないので、良い意味で気を楽にして臨みましょう。 
生徒→ガリレオ: 二次試験を受験して
英検二次試験を無事終えることが出来ました。意見を問われる問題のうち、他の2問は問題集と全く同じ問題が出題されたのですが、1問は質問の意味をうまく捉えることができませんでした。結果に自信はありませんが、先生のレッスンのおかげで、自分の実力は出し切れたと思います。
ガリレオ→生徒:  上のメールへの返信
意見を問われる問題のうち、他の2問は問題集と全く同じ問題が出題された
良かったですね(^o^) 準備したものが本番で出るのは「運が良かった」わけですが、その運を引き寄せたのは、しっかりした準備をして臨んだという事実があったからこそですo(^_^)o
生徒→ガリレオ: 二次試験合格報告
こんばんは。
今日英検二次試験の結果がネットで閲覧可能になり、確認したところ合格していました!
先生の充実したスピーキング対策のおかげです。ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。


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Thursday 17 November 2016

わかるか。すでに自分で限界を作ってしまっていることを。【オシム語録×ガリレオ節】

繊細で弱い。その思い込みが自らの "限界"を定めてしまう。

日本人は欧米人ほど筋肉がついていないから、フィジカルに負荷をかけられない-。その通説に対してオシムは、ジェフ時代も日本代表の監督時代も、一度として日本人選手のフィジカルに問題を抱えたことはなかったという。繊細で弱い。そう思い込むのは、コンプレックスであり、そこから逃れられずにいることが自身の限界を定めてしまう。まずは、心の壁をなくして自分を解放せよ、とオシムは提言する。
これは日本人サッカー選手のフィジカルに対するオシム氏の考えであるが、日本人英語学習者の英語学習に対するメンタリティにも通じるものがあるのではないだろうか。

​典型的には発音だろう。「ある程度の年齢に達した後の語学学習では、ネイティヴのような発音は身につけられない」という限界設定。確かにネイティヴと「全く同じ」というレベルを目指すのは非現実的だとしても、自身の英語コンプレックスから限界を定めてしまい、発音がうまくできないことの言い訳に使ってしまうのでは良くない。

事実、よく発音を訓練された日本人の話す英語は、English as an International Languageとして何も臆するものではない。(一方、カタカナ英語を「日本人英語」として押し通そうとするのは、コミュニケーションの相互協調を無視した行為と言わざるを得ない。)現状の絶対数は残念ながら少ないにしても、そのような good enoughな英語を使いこなしている日本人は確実に存在するのである。

冒頭のオシム氏のことばも、だからと言って日本人選手が欧米人やアフリカ人のようになれると言っているのではない。むしろ「日本サッカーを日本化する」という、代表監督時の方針と同じベクトル上の考えで、自分たちの特徴を正しく客観視し、それを生かしたプレイを目指す中で、実際の試合の中で起こりうるフィジカルコンタクトに勝てるための準備・トレーニングを積んでおくことの必要性・重要性を説いたものと読める。

英語発音学習に応用するならば、まず認識すべきは「母語である日本語の音韻体系で区別される音素の数が英語より少ない」ということ。従って、日本語では区別しない L/Rや B/Vを分けなければいけないし、THのような新しい発音方法も身につけなければならない。放っておくと L/Rはラ行音、VはB、THはSになってしまう傾向を持っていることを自覚し、そうならないように意識的に訓練を重ね、自動化=常にLはLとして、VはVとして…など、発音するのが当たり前になる状態を目指す。

この意識的トレーニングの過程は、ネイティヴの子どもが母語を獲得する場合とは全く異なる方法・メカニズムに沿って進むわけだが、これはフィジカル面で日本人がアメリカ人になれないのと同じ。

それでも、試合に勝つためのフィジカルは身につけることはできる。それでも、コミュニケーションを円滑に行うための発音は身につけることはできる。

☆Here is the Path to Wonderland★

本当にそこに壁があるのか?
ファンカスト



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Friday 11 November 2016

contact = ネコ ~英語も高低アクセント~

cat_phone

英語の発音解説では、よく「日本語=高低アクセントであるのに対し、英語=強弱アクセントだ」という言われ方をされてしまうが、この認識は不正確である。

英語らしい発音の肝となるのは、「強く言うべき音節は高く長くはっきりした母音で、弱く言うべき音節は低く短くあいまい母音で」発音するというメリハリをつけることである。日本語ネイティヴの学習者に対し、母語で生じない「ある部分を『弱く』言え」というアドヴァイスは通じにくいはずである。一方で音の高低差に関しては、例えば「あめ:雨/飴」や「はし:箸/橋/端」など、日本語の例と結びつけてはっきりとイメージしてもらいやすい。

先日のTOEIC講座にて、"Please contact my assistant..."という文を言うときに、contact |ˈkɒntækt |をどうにも oO のように発音してしまう生徒がいた。勘違いであっても癖がつくと治りにくいもので、単語単体で言い直させる限りでは正しい Ooにすぐ改善できるのだが、フレーズ・文の中で発音させると oOになってしまう状態が続いていた。

これを矯正するにあたって -tactの部分を低く言うように指導し、魔法の杖で高低差のつけ方を視覚的にイメージさせて実際に発音させてみると、最初の数回は癖が現れて安定しなかったものの、次第に感覚を掴んでくれたようで、最終的には申し分なく正しい発音で文全体を read-and-look-upできるまでに至った。

察しの良い読者諸君であれば、今回の記事タイトルである「contact = ネコ」の意図はもうお分かりであろう。contact |ˈkɒntækt | はと同じ感覚で言えば(もちろん、con-部分の長さや個々の母音の音価についての補足は必要としても)正しい発音ができることになる。


英語のアクセントもまずは考えて/教えてみるという風に、(再)認識しておくと良いのではないだろうか。

★Here is the Path to Wonderland☆
ガリレオの授業を受けたことがあれば一度は言われるセリフ:
「もっと落差をつけて!」・「もっと振れ幅を大きく!」
…要するに、このことですな。


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Saturday 5 November 2016

「努力バカ」教員に当たってしまう不幸

■答えを見るべからず…?

「文法問題集を解くときは、簡単に答えを見てはいけません。正解を見てしまうと分かった気になってしまうので、参考書などを熟読して理解に努め、自力で考えながら繰り返し取り組むことが重要です。」

…一見もっともらしい主張である。しかし、このような努力バカ教員が勧める勉強法による弊害のせいで、結局実力を伸ばす前に挫折してしまう学習者が後を絶たない。

ガリレオ自身、イタリア語などの第2~外国語学習の際には、わからない問題に出会ったらさっさと解答を見て、正しい文を確認するという方針で進めているし、生徒に対しても(とりわけ独習・予習で取り組む場合は)こちらのやり方を奨励している。

■文法学習の到達目標

これもまた、目標と手段の混同による悪弊の一例と言えるであろう。すなわち、「文法問題の答えが正しく選べて、例文の意味がわかる(正しい訳が言える)」ということを【目標】と考えている連中にとっては、そこに至る過程で虎の巻を覗くなんてことは cheatingであり、「もっとマジメに努力をしろ!」ということになるのであろう。

だが、それは本当に語学学習における目標か?

むしろそんなところは出発点であろう。自分の生徒が「答え丸写し」を持ってきてしまうと、それ以上は何も教えられない…などという授業をしているから、解答を見ることが悪(ズル)になってしまうに過ぎない。

(決して世の中に質の良いものが多いとは言えない)参考書などを読んで「自力で考えて問題を解いてくる」という作業をしたとして、その結果、非文をこしらえてきたら・それを書いたり読んだりしたことで、間違った例文が頭に残ってしまったら…本末転倒ではないか?

「正しい文法規則に基づいた例文の意味がわかり、正しい発音・リズム・イントネーションで口頭再生できる」という、語学学習で本来あるべき目標を正しく見据えて授業を行なっていれば、正解の例文を想起するまでの過程は二の次であり、むしろ無駄な時間をかけずに正しい例文に数多く触れ、1つでも多く正しく言えるように音読・read and look upなどの練習にこそ時間をかけるという学習を奨励できるはずだ。

■脱・努力バカのために

努力そのものは尊いものである。また、語学学習は(に限らず何であれ熟達しようとするならば)努力なしに成り立つものではない。

だからこそ、努力の方向の正しさは常に自省・検討すべきです。

☆Here is the Path to Wonderland★

ちなみに、「答えを写してそれで終わり」にするのは、努力バカ以前にただの…( ̄ω ̄)



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Saturday 22 October 2016

大した感謝もされないが…thatの「ねじ」理論

Puffyの隠れた(?)名曲に「ねじポーション」というものがあります。
雨でも風でも嵐でも
個性は光らない
大した感謝もされないわ
Screw up! Yes! ねじポーション
ーねじポーション (作詞: 大貫亜美 作曲: NARGO)

多少こじつけっぽいが、英文法の中で「ねじ」のはたらきをする品詞といえば、接続詞ということになろう。そしてその接続詞も、その存在価値を充分に理解されないまま、実は非常に重要な役割を一身に担っているというケースがあるので、今記事ではそこに光を当ててみたい。

◼︎ that節を等位接続 (and/but/or) する場合、2つ目のthatは必須

次の例文で検討を進めていこう:

He said (that) he liked that town and that he would live there. 
「彼は『この街が気に入った。ここに住みます。』と言った。」

saidの直後の thatは、(  ) で括ったとおり、省略しても構わない。
一方で、赤太字で示した andの後ろの that省略不可である。

言語現象を単に紹介して、「間違えないように注意せよ」というだけなら誰でもできるが、問題は【なぜ】andの後ろの that省略不可になるのか?ということ。

これを考えるには、まず等位接続詞を見たときの原則である「何と何 (←文法的に同じステイタスを持つ要素) が接続されているのか」を確認することがスタート。
上の例では、彼 (He)の発言内容は、直接話法で書けば
  1. "I like this town."
  2. "I will live here."
という2つから成り立っている。

これを間接話法で表した場合を図式化すれば:

He said [① (that) he liked that town] and [② that he would live there].

というようになり、saidの目的語としてはたらく2つの that節 (=発言内容)が結ばれている。したがって、andの後ろの thatは、2つ目の発言の引用開始部分を明確化する役割を果たしている。

◼︎ 2つ目の thatまで省略してしまうと…?

また、もし仮に andの後の thatを省略すると何が起こるか考えてみると良い。上記の通り、等位接続詞は同じ文法ステイタスを持つ要素を結ぶはたらきを担う。しかるに、「主節 + 主節」という (意図しない)接続も可能になってしまうのである:

[① He said (that) he liked this town] and [② he would live there].

このように、 andの後の thatが無いと、②の部分が saidの目的語ではなく、独立した新しい主節として①全体と結びつけられるという無駄な解釈可能性を生んでしまう。

andの後の thatは、文の解釈上で生じうる曖昧性を解消し、正しい理解へと導くための道しるべとしての役割を一身に背負っている。発音上も弱く、言ってみれば地味な機能語ではあるが、実は「ねじ」と同じように、1つ外れると全体がうまく機能しなくなってしまうような重要なパーツなのである。

★Here is the Path to Wonderland☆

文法が先立って存在しているのではない。コミュニケーションが円滑に進むように、ネイティヴが工夫してきた結果が「文法」として記述されているだけである。だからこそ、「言語現象には必ず理由がある」

Thursday 20 October 2016

文法指導と音声指導は一体である

TOEIC500点講座にて、「修飾」という概念を解説…いや、むしろ【体感】させるために、「修飾語抜き足し read-and-look-up」という活動を行なった。

例)I saw an interesting movie yesterday.
[修飾語抜き]: I saw a movie.
修飾語は取り去っても文法的な文が成立することを確認。

[機能語足し①]: 名詞 [movie]について情報を詳しくするために、形容詞 interestingをつけて read-and-look-upする。
→ I saw an <interesting> [movie].

[機能語足し②]: 動詞 sawに対し、それがいつのことか?という時間情報を付け加える副詞 yesterdayを足して read-and-look-upする。
→ I saw a movie (yesterday).

①と②を通して、「形容詞→名詞を修飾 / 副詞→名詞以外を修飾」という品詞の働きの違いも体感できる。

[機能語足し③]: 全文を read-and-look-upする。
→ I saw an <interesting> [movie] (yesterday).

こうした中で、例えば an interestingにおいて語末 nと語頭 iが繋がることを、「アン・インタレスティングじゃない!杏仁豆腐の『杏仁
!!」などと注意を促し、movieの /v/などとともに正しく言えるようになるまでやり直させる。

また一方で、形容詞 interestingが名詞修飾ではなく、補語 (C)になっている "The movie was interesting."という文においては、interestingを抜いて文法的な文が得られないことと対比すれば、結局は形容詞の「限定用法」と「叙述用法」の違いの1つを、こうした専門用語を持ち出すまでもなく身につけさせることに通じていくであろう。


言語の物理的側面が音声である以上、文法指導と音声指導は不可分なはずである。文法を教える時こそ、音読や read-and-look-upなどを活用し、「音」にこだわれ

★ Here is the Path to Wonderland☆
"reply to your question"にしても、/r, l/をきちんと区別し、語末 /n/にも注意して "reply to your question"が言えるようにすること。「replyが自動詞だ/ toが必要 / 直接目的語を取らない」などという【説明】は、せいぜい最初に1回注意喚起として言えば充分である。

Wednesday 12 October 2016

「携帯電話 = cell phone」は半分間違い:単語帳暗記の落とし穴

先日の Skypeレッスンで指導したこと。

cell phone


"He tried to call her, but her phone was off." という文を復習で口頭英作文させた時、生徒が phoneの部分をわざわざ cell phoneと表現したので、いわゆる単語帳での1対1丸暗記型学習の弊害というものを感じ、指摘・指導をするに至った。

確かに「携帯電話」を英語で言うと cell phone または mobile phone…という知識自体は間違っていない。しかし、注意すべきは文脈の中での使用状況である。

Cell phone / mobile phone というのは、現代日本語で言う「家電(いえでん): landline」と区別をつけるための概念を表し、あえてはっきり cell/mobile phoneと表現するからには、landlineではなく…という対比が何らかの理由で想定されていることになる。

これだけ携帯が普及した現代においては、phone = cell phone がデフォルトの解釈と考えてほぼ差し支えない。ましてや上の文においては「電源が切れていた」ということを言っているのだから、phoneと言うだけでもそれが携帯であることは誤解なく伝わる。

このように、単語ひとつ取ってもその使用の選択には理由がある。単語帳で英単語と訳語を並べて眺めているだけでは、実際にその表現を自然界で使いこなせるようにはなっていかない。

本物の語学学習のためには、この世界で実際に使われていることばの姿をつぶさに観察・分析し、それを真似しながら自分のものとして身につけていく姿勢が不可欠。またそのためには、本物(洋書なりニュースなり、周囲の人の発話なり…)を読んだり聴いたりして理解できるようになるための基礎訓練を十分こなす必要がある。

☆Here is the Path to Wonderland★
Phoneと言うだけで携帯とわかる。そう、iPhoneならね♪
(いや、別に iPhoneに限らないけど ^^; )


Saturday 16 July 2016

【London ことば・文化探訪】#10 Team Teaching始動へ!

■ London最大級の本屋 Waterstonesで Claudia先生に会う

ガリレオ研究室の誇るレッスンメニューとして、現在公開準備を進めている Team Teaching. 地理的な制約を超えて世界のどこからでも受講可能な Skypeレッスンの利点を活用し、ガリレオによる授業と London在住のネイティヴ教師との実戦演習有機的に組み合わせた英語学習を可能にする環境を整えていきます。

今回の London訪問では、その Team Teachingレッスンで team upする Claudia先生と会う機会にも恵まれた。もちろん、それまでも Skypeで「顔を合わせて」打ち合わせを重ねてきてはいたが、実際に対面するのは今回が初めてというのは不思議な感覚であった。

Claudia先生は Londonの Chelsea(テムス川北岸の高級街)で英語学校の校長をしており、British Council, International House, および Westminster Universityと協調して英語教育活動にあたっている経験豊富な教師で、IELTS指導者・試験官も務めている。

Galileo&Claudia
Photo by 更家由美子さん

Claudiaとの Team Teachingが実現するに至ったきっかけとなった場所が、この Waterstonesという本屋。ガリレオ研究室の生徒であり「ガリレオ先生」の名付け親でもある更家由美子さん(デューク更家夫人)が、英語学習用のテキストを探していた時に、声をかけて English Fileを勧めてくれたのが彼女であった。

英語学習者用の教材を探しているにもかかわらず、アドヴァイスを求めた店員は「学習者レベルのやさしい英語」となるように意識的にレベルを下げるということができない矛盾…それでも諦めずに良いテキストを探そうとする必死さが、Claudiaの琴線に触れたと見える。

後に Claudiaはメールで
I really don't know what made me talk to and assist Yumiko at the bookstore last year; it is something I don't usually do as I don't like disturbing people; It must have been destiny or better, it was just meant to be
[概要]: 普段なら知らない人に声をかけるなんてしないのだけど、あの時は何故か Yumikoには話しかけたの。運命というか、そうなって然るべきだったのね。
と書いていたので、これはまさに運命によって導かれた Team Teachingといえよう(^_^)b

今回は更家さんも来てくれて、物語のページが開かれた場所に、物語を開き・紡いでいくメンバーが揃ってのひと時であった。
この3人での英語学習談義の具体的な内容は、また次の記事で紹介していきたい。

■ Claudiaのメール英文解説

1. what made me talk to assist Yumiko

意味としては「なぜ私が Yumikoに助言を申し出たのか」ということだが、英語としてより自然な発想では、このように「何が私をそうさせたのか」の使役構文で表現されることが圧倒的に多い。

※参考クイズ:「なぜそんなに怒ったの?」を英訳しなさい。

Why did you get so angry?
→ 'You got so angry.'となった理由を問うている言い方。よって got angryした責任は youに帰されており、相手を責める or たしなめるような響きを持ってしまう。

What made you so angry?
→ 'You got so angry.'となる状況を作り出した原因を問うている言い方。よって got angryしたのは何らかの外的要因が働いたことが前提とされており、英語表現としては相手を責めることのないニュートラルな尋ね方となっている。

2. disturb

ホテルに泊まった時、'DO NOT DISTURB'「起こさないでください」という札を見たり使ったことがあるかもしれない。
disturbという単語は 'to interrupt someone'の意味で、「起こす」に限らず他人が何かをし(続け)ようとしているのを邪魔することを表す。Claudiaだけでなくイギリス人の基本的な行動様式としては、 disturbing peopleは避けるべきことと考えられているそうなので、実際かなり例外的な行動であったといえよう。

もっとも、声をかけてくれたおかげで、更家さん曰く「初めて英語の教材で楽しいと思った」 English Fileシリーズに出会えたわけなので、disturbどころか大変ありがたい話であったわけなのだが (^_^)v

3. or better

'A or B' の形は、A/Bに入るのが語であれ句であれ節であれ、二者択一の事項を表す。

従って選択肢を確認すると、
  • A = It must have been destiny「運命であったに違いない」
  • B = it was just meant to be(4の解説参照)
この2つの選択肢を示した上で、'A, or better, B' では、「AよりもむしろB・Aよりもっと良いのはB」のように、一度 Aを噛ませ犬的に提示しておいて Bの方を強く推す言い方となる。

4. it was just meant to be

LDOCE5[something] was meant to be/happenの項には、
used to say that you think a situation was certain to happen and that no one could have prevent it.
[概要]: ある状況が確実に起こり、誰もそれが起こることを妨げられ得なかった、と考えることを表すのに使う。
と定義されている。

まさに、更家さんとの出会い→ガリレオとの Team Teachingという流れが、自分の意思を超えた何かに誘われた感覚が映し出された表現といえよう。

■Team Teaching受講について

レッスン詳細ページは、現在 Claudia先生の profileなどをまとめて準備を整えている途中ですが、受講希望の場合はお問い合わせを受け付けています。
ガリレオ研究室 お問い合わせページ

効果的な連携の中で学んでいただけるように、初回カウンセリング (The Rabbit Hole)はガリレオが担当し、学習ニーズや目標をお伺いした上で、責任を持って Claudiaとの打ち合わせを行います。

現在、開校記念として初回カウンセリングは無料にて提供していますので、この機会にぜひお問い合わせください!

==========

■余談 (1)

Waterstonesの「看板猫」からの message:

Waterstones-Kitty

London訪問記念にということで、Claudiaが Watching the Englishという本をプレゼントしてくれた。
イギリス人の会話や行動における「暗黙の了解: Hidden Rules」を紹介・分析した本で、今回の【London ことば・文化探訪】を振り返るのにも非常に役立っている。
  • イギリス留学を希望している
  • 仕事でイギリス人を相手にする機会が多い
  • イギリス英語を学びたい
…といった人にもぜひ勧めたい。
ガリレオ研究室の Skype個別レッスンでテキストとして扱うこともできるので、希望の際はお申し出ください。


■余談 (2)

以前、ガリレオ研究室で準備中の Team Teachingページに掲載していた Tomaso Pellegrini先生につきましては、この 6月の大学卒業→就職に伴い、副業規定のため残念ながらガリレオ研究室の教師として活躍してもらうことはできなくなりました(T^T)

それでも、ガリレオ自身が Tomasoからイタリア語を習っているので、その学習経験を追々ホームページコンテンツとして公開します。彼にはそちらのページに登場してもらう予定ですので、どうぞお楽しみに♪


Thursday 23 June 2016

【London ことば・文化探訪】#9 レストランに入る

■注文方法から見えてきた日英食文化の違い

Harry Potterのスタジオ見学ツアーから戻り、遅めの夕食へ。スタジオにもレストランはあったのだが、グッズショップすら素通りしなければいけなかった中、いわんや食事の暇など…という話。恐らく、時間の決まっているツアーで行く場合は、食事は別途考えた方が良いと思われる。

そんなわけで、Kings Cross駅の mezzanine | ˈmezəniːn | :「中2階」の shared service yard にあるイタリアンレストラン Prezzoに入ってみる。
レストランの入り口には Please wait to be seated.「席にご案内するまでお待ちください。」と書かれている場合が多いので、waiter/waitressが来たら 'A table for 人数*, please.'と伝えて案内してもらう。(*1人ならば a table for one, 2人ならば a table for two...といった要領)

SPAGHETTI WITH KING PRAWNS

Spaghetti with King Prawnsを注文。セット内容は ClassicLightから選べて、サラダが付いてくる Lightを頼むことにした。(Lightはサラダが付く代わりにパスタが少なめになる…とは言っても、日本の感覚からすれば「普通盛り」くらいの量はあるので、個人的にはこの選択で当たりだった。)

さて、注文の際に 'And for dessert...'と言いかけたところで、waitress'You can order dessert later.' と制される(^_^;
デザートは食後に追加注文するのが作法という意味なのかどうかは分からないが、海外ではこうした「暮らしのリズム」のちょっとしたズレに気づかされることが多々ある。

別段コース料理を頼んでいるわけではないが、やはりヨーロッパの食事文化の発想では、料理はコースの一環として線的に捉えられるということが基盤にあるのだろう。
一方で、和食文化の発想では、「一汁三菜」といった言い方にも表れているように、「お膳」という単位を元に面的に料理が出てくるイメージを抱きやすい。

だからこそ、「デザートを食べない」ということを表すのに、
  • 日本語→デザートを抜く(面の構成要素を減らす)
  • 英語→ skip dessert (順番に来るものを飛ばす)
といった言語表現の違いが生じることにもつながってくる。

■現実世界の英会話

パスタとサラダを食べ終え、デザートの注文に再び挑む。
(ところで、追加注文システムは、もしもお腹がいっぱいになったら単純に skip dessertすれば良いだけなので、その意味でも好ましい方法なのかもしれない。)

意気揚々と、最初の段階から目をつけていた「Panna Cotta (with a summer fruit compote)をください!」と伝える。
'Unfortunately, we don't have panna cotta today.'
「申し訳ございませんが、本日パンナコッタは切らしているのです。」
にゃんですって
DHC タマ川ヨシ子 LINEスタンプより

'Which ones are available?'「どれならあるのですか?」とお伺いを立ててみると、要するに everything but panna cotta:「パンナコッタ以外なら全部大丈夫」ということらしい。現実世界の英会話では、型どおりの注文をして首尾よく希望が叶うばかりではない。もっと言えば、想定通りに事が進まなかった時に軌道修正できてこその語学力である。

とりあえず、'Then, let me think again.' と伝えて再検討に入る。ケーキなら、並びに takeawayの店もあったなぁ…などと思いながらも、料理も美味しかった事だしデザートも食べていく事にする。

改めてチーズケーキ(raspberry sauce添え)を注文すると、閉店が近くなったという事もあったのだろうが、今度はコーヒーマシンがもう使えないからコーヒー系の飲み物は出せないとの事。こちらとしても夜にコーヒーという気もなかったので構わないと言うと、本来 hot drinkが付くものだからということで、まさかの白湯 (;ー▽ーA

せっかくのご厚意は半分程度いただき、こうしてまたひとつ Londonでの貴重な文化体験となった夕食を、無事に済ませるに至った。


Friday 17 June 2016

【London ことば・文化探訪】#8 魔法の coachに乗って Harry Potterの世界へ(魔法編)

■The Making of Harry Potter

今回の記事では、いよいよ魔法の世界へ − Warner Bros. Studio Tour London - The Making of Harry Potter の見学ツアーについて書いていこうと思う。

ここではガリレオも、普段 Muggle の世界では抑えている magical power を余すことなく発揮することができるというもの。ちなみに、ガリレオは Luna Lovegood と同じ Ravenclaw 寮です。

The Making of Harry Potter 1
DVD + 2 PHOTOS で £40

このツアーでは、Studio JStudio Kという2つの建物 (+ 中庭) を通って

  • Dumbledore先生の校長室などの実際のセットを見たり、

Prof. Dumbledore

  • Hogwarts Expressに乗ったり、

Hogwarts Express

  • Number 4, Privet Driveの Dursley家を訪れ(に押しかけ?)たり、

Privet Drive

  • Diagon Alleyでのウィンドウショッピングを楽しんだりすることができる。

Diagon Alley

大体のツアーでは、現地で3時間程度の自由行動になると思うが、時間配分には若干注意が必要かもしれない。なんと言っても、集合時間の7時には駐車場に戻らないと、送迎の coachは魔法のように消えてしまうと釘を刺されていたのだ。展示をじっくり見る時間は充分あったけれど、最後の gift shopは素通りする羽目になってしまった。

(その意味でも、滞在後半に Kings Cross駅(!) 直近のホテルに滞在したことが幸いした。Platform 9 3/4 のあるこの駅には、その名も The Harry Potter Shop at Platform 9 3/4というオフィシャルショップがあり、散財には事欠かない。)

■Muggle: 新語を作る仕組み

もともと 'a person who possesses no magical powers' の意味で Harry Potterに登場する muggle という単語は、2003年に英語辞書の権威である Oxford English Dictionary に収録されている。(より一般的に 'a person who is not conversant with [〜に精通していない] a particular activity or skill' の意で掲載されている。)

ベストセラー小説は時代ごとに生まれるが、作者の想像力・創造力によって作られた新語が「辞書に載る」という領域にまで達するためには、やはりその作品が時代を経ても読み継がれていくと確信できるだけの魅力を放つ必要があるだろう。

文学作品から誕生した新語が英単語として定着した(よって、辞書にも収録されている)例として、真っ先に頭に浮かぶものといえば、『鏡の国のアリス』に出てくる chortle:「(ガハガハと)嬉しそうに笑う 」がある。その意味では、ハリーポッターも、世界中の子どもたちに愛される文学作品として、アリスと肩を並べようとしている様を目の当たりにしているような気になってくる。

この chortleという動詞は時代を超え、Harry Potter and the Philosopher's Stone の中でも使われている:
(Mr Dursleyが、朝「行ってきます」のキスをしようとするも、かんしゃくを起こしている息子 Dudleyの姿を見て)

'Little tyke,' chortled Mr Dursley as he left the house.
「しょうがない子だ」と言いながらも、嬉しそうに笑うと家を出た。
まだ見ぬ次の時代の名作の中では、J. K. Rowlingの創り出した単語が受け継がれるのであろうか?ことばのロマンスは尽きない。

さて、muggle にせよ chortle にせよ、新語・造語とは言っても全くでたらめに生まれたわけではない。むしろ、英語の語形成の規則に基づいているからこそ、英単語として「自然に」受け容れられ、定着するのである。

Muggle の場合は、mug: 'a person who is stupid and easily deceived' に、「小さい」の意味の名詞を作る接尾辞の -le を付けて作られた単語である。

一方 chortle は「混成語 (blend)」または「かばん語 (portmanteau word)」と呼ばれ、二つ折りの旅行かばんの両側に1語ずつ単語を詰めて蓋を閉めたかのように、chuckle:「くすくす笑う」と snort:「鼻を鳴らす」を合わせて作った単語である。

夢のような魔法も、正しい呪文 (magic spell) を「正しい発音で」言ってこそ効果を発する。ことばとは、muggle の日常世界からファンタジーの世界へとも言えよう。

魔法を学ぶなら Hogwartsへ。
ことばを学ぶならガリレオ研究室へ。

Tuesday 7 June 2016

【Londonことば・文化探訪】#7 魔法の coach に乗って Harry Potterの世界へ(移動編)

■ Coach driver直伝! coach  bus の違いとは?

London滞在4日目には、coach | kəʊtʃ | と呼ばれる大型の観光バスに乗って少し足を伸ばし、Warner Bros. Studio Tour London - The Making of Harry Potter の見学ツアーに参加。ここでは、Harry Potter seriesの映画撮影に使われた本物のセットや小道具、衣装、特撮技術などに触れながら、世界を魅了した映画の制作過程を学ぶことができる。

ただ今回の記事は、そこに辿り着くまでの coach や、道中 driver が教えてくれたことに注目して書いていこうと思う。

この観光ツアーの出発点となったのは、Victoria Coach Station というバスターミナル。とはいえ、Londonにおいては buscoach は厳密に使い分けられており、その証拠に Victoria Bus Station というと数マイル離れた全く別の場所になってしまう。

先日配信・録画アップロードを行った Live from London-extra(←解説箇所にリンク)でも触れましたが、coach driver直伝の bus / coach の区別の方法とは…
A bus is driven by a bus driver; a coach is driven by a gentleman.
 とのこと(笑)。

まぁ実際には、ロンドンで bus というと、典型的には double-decker と呼ばれる赤い二階建て路線バスのことを指す。

double-decker
double-decker

一方で coach とは、昔は大型4輪馬車のことを指し、現代では大型の長距離観光バスのこと。

coach
coach

Busは路線内の始点〜終点間でいくつもの bus stopに停車するが、coachは基本的に途中停車せず、決まった客を出発地から目的地まで運ぶもの、という区別も可能だろう。

さて、(自称) gentleman たる coach driver の軽妙な jokeを楽しみながらの道中、気をつけなければ見逃してしまうような Londonの街の模様についてのお宝情報を得ることができた。

■ Georgia ~ Victoria朝の fanlight

Londonの街並みで特徴的に目につくものの一つに、fanlight と呼ばれる扉や窓の上にある扇形の明かり窓がある。

fanlight
fanlight

BBCドラマ Sherlockの撮影の際には 221B Baker Streetの flat になるSpeedy's Cafeの隣の扉や、The Sherlock Holmes Museumのある現在の 221B Baker Streetの扉の上にも、こうした fanlight が付いている:

221B Baker StreetSpeedy's Cafe

これらは、機能的には玄関広間 (hallway) に太陽光を多く取り入れるためのものだが、ジョージ王朝時代を代表する建築デザインとして発展し、特に住宅地で semidetached(二軒一棟)や terraced house(連棟長屋)形式の建物が並んでいるところでは、このデザインがそれぞれ微妙に異なるというのがミソなのだそうである。

というのも、上の写真の「221B」のような door numberが付けられるようになったのは、ジョージ朝より後のヴィクトリア朝時代。それまでは、この fanlight こそが「番地」を示す働きを一身に担っていたらしい。そのために、家の造りは隣同士よく似通っているものの、fanlight だけは各々独自のデザインでその姿を主張しあい、街並みにアクセントを加えている。

このツアーの coach driver が言及してくれなければ、おそらく気がつかないまま Londonを後にしてしまっていたことだろう。間違いない、彼は gentleman であったのだ。

Saturday 4 June 2016

【London ことば・文化探訪】#6 日本のスイカは英国の牡蠣

先日配信→録画アップロードを行った Live from London-extra は、内容盛りだくさんで全体としては約1時間半にも及んでしまいました (^^;

今回は、まず気軽に授業内容の美味しいところを視聴いただけるように、「ロンドン交通事情」について切り出した short movieを新たに公開しました!



■スイカは「チャージ」・Oyster"top up"

動画でも紹介している通り、今やロンドン生活には欠かせないと言えるアイテムが Oyster card です。その名の由来についての解説は動画をご覧いただくとして、本記事では Oyster card を使いこなすために、日本人にとって忘れてはならない注意点をシェアします。

その注意点とは、Oyster card は「チャージ」することが出来ないということ。

―もちろん、一度購入した後に何度も入金することは可能です(;^_^A
ただ重要なポイントはとして、英語表現として入金を charge と表現しても通じないのです。

日本語の「チャージ」に相当するイギリス英語は"top up" といって、「(量が減ったものを) 上まで満たす」イメージで記憶すると良いでしょう。

実際の使い方は次のようになります:
You can top up your Oyster card online.
「オイスターカードはオンラインで入金出来ます。」 
If you set up Auto top-up, your card is automatically topped up when you touch your Oyster card on a yellow card reader.
「Auto top-upを設定すれば、オイスターカードを黄色のカードリーダーにタッチした時に自動的に入金されます。」

Metaphorがつなぐ共通認識

Oyster card の入金に対して使うべき英単語は charge ではなく top up である…という点は、英語学習、さらには実際の英会話においても非常に重要なポイントといえます。

というのも、現地の人たちが当たり前のように 'top up Oyster card' と言っている中で、うっかり 'I'd like to charge my Oyster card.' などと言ってしまうと、いくら文法的に正しい英語であるとしても誤解を生んでしまうことでしょう。相手にとってみれば、「あえて普通とは異なる語を使っているということは、何か特別なことを望んでいるのではないか?」と、(実際には無駄な)想像をかき立ててしまうことになるからです。

実際の出入金が目には見えない Oyster card のような電子マネーにまつわる言語表現は、より具体的に知覚できる物事との類似性に基づく metaphor に頼らざるを得ない。その際に、どのようなものとの類似性に注目するかという部分は恣意的なものでしかなく、それぞれの言語を使うコミュニティーでの多数決によって決まる。

「チャージ」と言えば充電との類似性であるし、語源をさかのぼれば「荷を積む」という行為との類似性から意味が発展している。一方で top up は元来「容器に液体を満たす」ことに使われる言い方であり、イギリスの紅茶や pub 文化との結びつきが思い起こされる。

このように、metaphor は抽象的な概念をことばで表すときに欠かせない手立ての一つであるわけです。

■実際の top up 体験

さて、今回の London滞在では、一度だけ自分の Oyster cardを top up する経験をしました。

まぁまず自動券売機のような機械というのは unfriendly に作られている。特に観光客のようなよそ者には厳しい。その上、海外ではよくあることですが、お釣りでもらう紙幣というのは日本の感覚からすれば随分とクシャクシャになっていて、これまた券売機との相性が悪い。

なんとか画面の指示通りに「ここに紙幣を投入してください」まで首尾よく進むも、おっかなびっくり操作しているこちらの気持ちを見透かすかのように、そこに紙幣を差し込んでみてもウンともスンとも…(-_-; 日本では、まごついていると「お金を入れてください」などと余計に急かされてイライラするが、イギリスの券売機は無言でじっと待っている。

「何か間違えたか?」という思いも頭の片隅に、どうにか目の前の券売機が自分の差し出す紙幣を飲み込んでくれるように、向きや角度を変えてご機嫌を伺ってみる。

2分ほどは格闘しただろうか、ようやく無事に紙幣が投入され、topped up されたことになる。しかし、とかく異国では、くどいほど確認をしてみないと安心はできない。もう一度 Oyster cardを読み取らせて、たった今 top up したはずの残高を表示させてみる…大丈夫だ。

普段の生活では造作もないことが、土地が変わると何でも時間がかかる。もちろん大変ではあるが、毎日が新しい冒険となり、経験値を貯めて「ロンドンっ子レベル」を上げていくというのがまた醍醐味とも言えよう。ロンドンクエストは続く…次回は職業:魔法使いのスキルアップ記事になるかな?どうぞお楽しみに♪


Tuesday 31 May 2016

[動画配信レッスン・延長戦] Live from London-extra録画公開!

5/27に配信した、ガリレオ研究室の動画レッスン Live from 221B特別版
Live from London-extraの録画ビデオを編集→アップロードしました。

前回記事で紹介した、ロンドンからの配信レッスン Live from London共々ぜひご覧ください!

★ガリレオ研究室YouTubeチャンネル【登録はこちら】★
https://www.youtube.com/user/blackcatsserenade




Sunday 29 May 2016

[動画配信レッスン] Live from London録画公開!

5/20に Londonから生配信でライヴレッスンを行った、 Live from Londonの録画を公開しました!

★ガリレオ研究室YouTubeチャンネル【登録はこちら】★
https://www.youtube.com/user/blackcatsserenade



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Thursday 26 May 2016

【London ことば・文化探訪】#5 Sherlock Holmesを訪ねて(3)

The Sherlock Holmes Museum の後も、暫し Baker Street 探索を続ける。

Museumには Sherlock ゆかりの地を巡るための "The Sherlock Holmes Walk" という guide map も売っているので、時間があればそれに従って Baker Street を歩いてみるのも良いだろう。

さて、Sherlock には Baker Street tube station 前で出会うことができる:

Statue of Sherlock Holmes

足元のフェンスにあるQRコードに注目。この銅像そのものは 1999年に建てられたものだが、2014年の Talking Statues プロジェクトの一環で「喋り出す」ようになった。

*Talking Statues については、BBC Learning English でも取り上げられている。(←リンクをクリックすると BBC Learning English の動画に飛びます)

現在、London と Manchester に合わせて35体の Talking Statues があり、例えば London Library にある Isaac Newton の像にも同様のQRコードが付いている。

Statue of Isaac Newton

このように、London では、英国の生んだ偉人たちへの敬意を感じられる monuments をそこかしこで見つけることができる。その中でも Sherlock Holmes は、実在の人物同様、ともすればそれ以上に、愛され・敬われ・大切にされている存在なのだということがよく分かる。

​Baker Street tube stationのホームには、Sherlockの横顔 (profile) の絵がある:


この大きな Sherlock の profile を形作っているのは、小さな Sherlock の横顔がびっしり描かれたタイルなのである。シルエットだけでも、トレードマークたる deerstalker を被り、 pipe を咥えた姿は「世紀の名探偵像」として世界中の人々の頭の中に焼きついているということであろう。(さらに言えば、英語の profile | ˈprəʊfaɪl | は、日本語の「横顔」という意味とは別に、「全人格を表す角度」としての意味をも担っている。彫りの深さが顔の大きな特徴を占める西欧的な世界観が反映された考え方といえよう。)

かくして、Baker Street 界隈の探索では、現実世界と架空の世界の境目が次第にぼやけてくるような、不思議な感覚を味わうことができた。Sir Arthur Conan Doyle が描いたヴィクトリア朝時代への時間旅行を楽しむのも良いだろうし、今では BBC One の現代版 Sherlock によって、「Sherlock の London」たる世界は新たな拡がりを見せている。

想像力豊かに Sherlock の足跡を追う楽しみは、今後も尽きそうにない。

==========
本文では紹介するタイミングがなかったが、Northumberland Street には Sherlock Holmes Pub がある。ちょうど、Sherlock と John が 店先で何やら話をしているところであった…( ̄ω  ̄)

Sherlock Holmes Pub


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Tuesday 24 May 2016

【London ことば・文化探訪】#4 Sherlock Holmesを訪ねて(2)

Sherlock_museum_1

London滞在は終わりを迎え、無事に帰国を果たしましたが、「London ことば・文化探訪」として書きたい内容はまだまだ残っているので、滞在中盤〜後半の内容を中心に今後も続けていきます。今回は、The Sherlock Holmes Museum* 訪問の話。

221B Baker Street では、レモングラスの香りが出迎えてくれた。

「世界で最も有名な住所」であるこの地には The Sherlock Holmes Museum があり、Sherlockians や謎を抱えた依頼者の訪問を待ち構えている。実際、今でも 221B Baker Street 宛には事件の依頼の手紙が送られてきているという話も聞く。

残念ながら、ガリレオが訪れた時には、もう1人の天才的頭脳の持ち主である "consulting detective" は事件の調査で外出中であったようだが、彼の「生活の息遣い」は確かにここにあった。

Sherlock_museum_2

Hatdeerstalker を置いて出かけたことから推理すると、失業中の馬丁にでも変装して、Irene Adler の身辺を調べに行っているのだろうか。

さて、この museum の一階 (ground floor) は gift shop となっており、BBC Sherlock も含めて Sherlockians の心をくすぐる items が所狭しと並んでいる。

Sherlock_museum_3

しかし何よりもお土産として持ち帰りたかったのは、ここに漂う「香り: fragrance 」であった。そう思っていると、Sherlock の横顔: profile がラベルにプリントされた pure essential oil を発見。
かくして、首尾よく The Sherlock Holmes Museum の香りを持ち帰ることに成功したガリレオ研究室は、レモングラスの香りに包まれて、脳に新たなる心地よい刺激を与えてくれる場へとさらなる進化を遂げるに至った。

*【the + 固有名詞】

The Sherlock Holmes Museumの定冠詞 the は、一般名詞である museum に対して付いていると考える。Museums / galleries  / theatres / cinemas / hotels などは "the 〜 名詞"の形をとることが多い。
  • the British Museum 大英博物館 / the Sherlock Holmes Museum 
  • the National Gallery 英国国立美術館
  • the Palace Theatre
  • the Odeon
  • the Ritz
一方で、 Buckingham PalaceHarvard University のように、主要な公共施設で最初の語に地名や人名が来る場合は the を伴わない。

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Thursday 19 May 2016

【London ことば・文化探訪】#3​ Sherlock Holmesを訪ねて(1)

Speedy's sandwich bar & cafe


朝食は、Live from 221B の授業で扱っている BBC Sherlock の中で、221B Baker Street の舞台となっているSpeedy's へ。この cafe の実際の住所は 187 North Gower Street だが、ドラマ撮影の際は通りの名前を示した street sign を付け替えることにより Baker Street に早変わりする:

187 North Gower Street → 221B Baker Street
187 North Gower Street → 221B Baker Street

人気ドラマのロケ地となったことで、一気に観光客の注目を集めることとなったものの、元々は地域密着型のカフェ。「伝統と最新の融合」というのはロンドンを歩いていると常々感じることだが、ここも例外ではなく、伝統の English breakfast にアレンジを加えたSherlock breakfast というメニューがあったのでオーダーしてみる。

Sherlock breakfast
Sherlock breakfast

English breakfast には通常 bacon and eggs, tomatoes, mushrooms toast with butter, tea or coffeeが付くが、Sherlock breakfastbacon の代わりに salmon であった。

いずれにせよ、最大の特徴は "cooked" dish が出るということ。English breakfast と比較される continental breakfastcoffee and bread with butter のみであり、cooked なものは出てこない。

この cook という動詞には「火を通す」という意味が含まれており、日本語の「(料理を)作る」とは必ずしも一致しない。例えば、saladsandwichmake や prepare することはできる (make a salad / sandwich)cook するものではない。改めて見てもらえば、English breakfast に付くパンは toast (焼かれている)であり、continental breakfast では bread (焼かれていない)という違いに気づくだろう。

さて、個人的には、1日の頭脳活動を始める前の breakfast としては、やはり English breakfast を推したい。Speedy's Sherlock breakfast は非常に美味しく、ガリレオの脳に栄養を送り込むには最高の朝食であった。

その後、こちらのお昼にロンドン~日本で Skype を繋いで授業を行い、授業後はいよいよ本物の Baker Street へ。The Sherlock Holmes Museumの話は、また別の記事にて…

Wednesday 18 May 2016

【London ことば・文化探訪】#2 Subwayは地下道

​ホテル近くにあった、SUBWAYの標識と、地下へ続く階段。

Subway_London

はて、イギリス英語で地下鉄は underground, とりわけロンドンでは tubeというのではなかったか?と思って近づいてみると、これは地下鉄の乗り場ではなく「地下道」のこと。知識としては了承していたつもりだったが、やはりこういった単語の使い分けを「身体感覚」として身につけるには、実体験が不可欠であろう。

さて、この地下道はどこにつづくのか?夜に通るのは安全なのか?ワクワク・ドキドキは尽きない。小学生の頃、通学路から外れて抜け道・裏道探検に繰り出した時のように、用もないのにとりあえず通ってみることにする……

…ポイ捨てのゴミや空き缶が散乱していて、あまり好ましい道ではない(ー ー;) とはいえ、この地下道は、地上の roundabout を避けて、歩行者と自転車が安全に道路の反対側に出るための仕掛けであったのだ。

roundabout
roundabout: 環状交差点

Roundabout には信号がないから、車は基本的にひっきりなしに通っている。これを華麗にかわしながら横切るという芸当は、わずか5日の滞在で熟達できるものでもないだろう。綺麗な道ではないが、抜け道を通るのはいつだって冒険。ありがたい subwayであった。


Tuesday 17 May 2016

【London ことば・文化探訪】#1 Prologue: 飛行機の窓から見える街並み


雲間を抜けて、着陸までの15分は宝物の時間だった。

安井泉先生が『ことばから見る英国文化論』の中で、ロンドン行きの飛行機は左の窓側を勧められていたので、座席指定をしておいたのが大正解。おとぎ話に出てくるようなお家が、道路に沿って整然と並んだ美しい街並みを存分に堪能することができた。

もっとも「左の」というのは、安井先生が上の研究報告書を書かれた当時にヒースロー空港の上空を左旋回して着陸をしていた事情があってのことなので、現在は左右どちらでも構わないかもしれない。それでも、ロンドンに向かう時の飛行機の座席は窓側をぜひ勧めたい。

思うに、旅先に向かう交通機関の窓から、目的地が近づいてくるに連れて見えてくる景色は、物語の prologueであろう。



例えば羽田空港であれば、まさに大都会 Tokyoの忙しさの中に降り立っていくような気になるし、ホノルル空港着陸前はいかにも「南海に浮かぶ楽園の島」が少しずつ姿を現していくようであった。

シドニーでは Sydney Opera Houseと Sydney Harbour Bridgeによる出迎えがあり、森と湖の国フィンランドのヘルシンキは、まさに森の中へと降りていくようであった。

その意味では、今回のヒースロー空港着陸前のひとときは、まさに「不思議の国」への旅の始まり。1982年7月4日の輝く昼下がり、Lewis Carrolがリデル家の三姉妹(Aliceは次女)とともにボートで漕ぎ登ったテムズ川の、高低差のない平地を流れる静かな水面を見下ろしながらたどり着いたロンドン。

これから紡ぎ出される物語に思いを馳せて…


★Here is the Path to Wonderland☆

prologue | ˈprəʊlɒɡ |
最初の音節に強勢が置かれることに注意!(×プロロー

pro-(前の)+ -logos(話)→「開幕前の話」
log(o) / logueを含む単語はギリシャ語の logosを語源とし、「ことば」に関わる意味を持つ。

例:logo(ロゴ), logical(論理的な), dialogue(対話), ideology(イデオロギー・観念形態)