Saturday 30 December 2017

英語学習Q-A: 英単語を効率的に覚えるにはどうしたらよいですか?

友人を通して、英単語学習に関する相談を受けました:


「きかなかった事にします❤️」も1つの回答なのですが (笑)、もう少しマトモに返したガリレオ流の考え方を紹介します。

■ 効率を求めるのが一番効率悪い

…禅問答のようですがσ(^_^;)
ただ、真理は突いている。

「効率的に覚えるには…」という質問の裏には、できるだけ少ない労力で、できるだけ多くの英単語を覚える秘策のようなものを授けて欲しいという気持ちが伺える。もっと言えば、「英語ができる人には自分の知らない"秘策・裏ワザ"があり、それを身に付けさえすれば、簡単に『効率よく』単語が覚えられるようになるはずだ」…というような前提を持っているかのように思える。

しかし残念ながら、ガリレオ自身にしても、周囲で一定レベル以上の語学力を身に付けている人たちにしても、決して秘策・裏ワザで単語を覚えている訳ではない。普段から目標言語に触れる頻度・密度・必然性が高く、繰り返しの中で(「あ〜、この単語なんだったかな〜!?」というような悔しい思いを何度も何度も重ねつつ)脳と発音器官に浸み込んだ結果なのである。

結局のところ、文脈の中で身に付いたものだけが本物の単語力であり、単語だけ取り出して「効率よく」覚えようとすることが、かえって学習効果を阻害する要因になる。


■ 「労力」と思うか楽しむか?

例えば、多くの小学生は、相当数のポケモンの名前を記憶しているわけだが、その際に「効率の良い覚え方(つまり「ポケモン言えるかな?」)」に頼ってはいないはずである。




それでも、2017年の「サン・ムーン」現在で総勢 802匹(!) いるらしいポケモンを記憶に留めておけるのは、かなりの時間(お母さんに「もういい加減やめなさい!」と言われるくらい)と日々の繰り返しという「労力」をかけているからこそ。

ただ、当の本人はこれを「労力」とも思っておらず、ただ単にゲームを楽しんでいるうちに自然と記憶されていったということになろう。

これが英単語になると、途端に苦痛を伴う作業と化してしまう。もちろん、ゲーム(娯楽)と語学では同列で論じられることばかりではないにせよ、示唆を得られる点は確実に存在する。

ガリレオの語学学習の過程の中では、高校時代の小テストなどで「やらされた」場合を除き、いわゆる単語帳を使った学習というものを行なったためしがないまた、単語帳を「やらされた」時に学んだ(はずの)ものが何かしら残っているかというと、少なくとも意識化されるレベルでは全く思い当たらない。

一方、高3の時に初めてハリポタを原書で読んで以降、洋書(大学からは専門書・論文も)の多精読はずっと続けており、上で述べた通り、文脈の中で何度となく繰り返し出会った単語・表現が、血肉となって身に付いていると実感している。

読むだけでなく、聞く・書く・話すといった形で英語に触れるのは、ガリレオにとって「日常」であり、小学生のポケモン同様、時間と繰り返しに関して「労力」という意識はない。

単語帳や単語学習のための長文では、「『覚えよう!』と身構えることもなく、日常的に自然に…」という形にはなりにくい。効率的にという功利主義的発想を捨て、純粋に楽しめる洋書を一冊読み進めてみることを勧めたい。

☆Here is the Path to Wonderland★

その「洋書を一冊読み進める」のが自力で出来ないんだ!
…という人のために、ガリレオ研究室では他力多読のレッスンを用意しています。

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最初は補助輪を付けたって良い。「読めそう!」という感覚がつかめれば、ことばを巡る旅へ自力で漕ぎ出して行ける日は遠くない未来に待っている。


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受験生必見!:直前期の英語学習について

受験本番が近づくにつれ、単語力や時間配分など「足りないところ」にばかり目が行き、気持ちが焦っていないだろうか?

ここで、もっと新しい問題に取り組んでおこう…という思考になりやすいかもしれないが、直前期こそ【今までやったことの復習】に力を入れることを勧めたい。

受験生であれば、これまでに解いた過去問や模試・問題集の長文や、リスニング問題のスクリプトが手元に相当数あると思う。思うような点数が取れなかったものを優先的に、改めて本文の音読や、リスニング音源があれば音声だけで聴き取りに取り組んでみよう。

「スムーズに読めない・聴き取れない・意味と結びつかない」という箇所に弱点が残っている。こうしてあぶり出された補強ポイントに絞って復習し、「100%理解を伴って読める・聴ける!」という文章を本番までに1つでも多く増やしていくだけでも、ラストスパートとして大きな力になる。

exam

またこれは、「今まで『これだけ』やってきたんだ」という自分の学習過程を振り返ることにもつながる。

もちろん、どれだけ準備をして臨んだところで、試験本番には"一抹"以上の不安を覚えるもの。しかし逆に考えてみれば、今この瞬間に試験を受けても余裕で入れるようなところであれば、「大丈夫だろうか?」と不安に思うこともないだろう。

本番に向けて不安・緊張が高まるのは、高い志を持ち、求められる実力に到達するために真剣に努力を続けている証拠。だからこそ「志望校」というのである。

本番までの限られた時間で無闇に新しい勉強を始めるよりも、これまで取り組んできたものを【確実に使いこなせる武器】として身につけ、自分の積み重ねてきた学習を信じて本番に挑んでほしい。

☆Here is the Path to Wonderland★

大丈夫かと思わない大学は、行きたくない大学だ。
- ガリレオが大学受験時に高校時代の恩師が贈ってくれたことば。
例えば高校受験生であれば、「大学」を「高校」と読み替えてもらっても同じことが言える。各自の目標に合わせて受け止めてもらえたら幸いです。


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Thursday 14 December 2017

英語発音Q-A: etc.にまつわるエトセトラ

先日、etc. (et cetera)の発音について質問を受けました。
etc. が / et ˈset(ə)rə /ではなく / ek ˈset(ə)rə /と発音されるケースを耳にしますが、なぜスペリングでも明らかに tであるところが /k/になるのでしょうか?
確かに、例えば Longman Pronunciation Dictionary, 3rd Edition (LPD)には "a pronunciation variation that is not considered correct"を表す記号とともに ⚠︎ ek ˈsetrəが記載されており、Oxford Dictionary of English, 3rd Edition (ODE)には以下のような興味深い記述が見られる:
A common mispronunciation of et cetera involves replacing the t in et with a k. This follows a process known as assimilation by which sounds become easier for the speaker to articulate.
太字斜体は原文・下線はガリレオによる。)
このことから、規範的な発音からすると "mispronunciation" / 非標準的の扱いにはなるが、ある程度多くの話者に広まっている発音であるといえよう。

■ "Assimilation"に対する疑問

上に挙げた ODEによれば、etc.における /t/ → /k/の発音変化は assimilation(同化)の結果ということなのだが、ここには少し疑問が残る。

本来、assimilationで /t/→/k/となる環境としてまず思い浮かぶのは以下のような場合である:
  • that cup /ðæk kʌp/
  • that girl /ðæk gɜːl/
etc. (et cetera)は摩擦音 /s/が後続する環境であるため、この場合にも /t/→/k/が生じるのか?というのが疑問であり、手元にある専門書を見る限りでは、この手の "assimilation"が明確に記述されているものは見当たりませんでした。

また、/t/と/s/の調音位置を考えると、両者ともに alveolar(歯茎音:/t/は無声歯茎閉鎖音・/s/は無声歯茎摩擦音であり、/t/→/k/の音変化はむしろ dissimilation(異化)なのではないかとも考えられる。

【参考】:Quoraにおけるこちらのスレッドで dissimilationに言及があり。また、Understanding Language Changeという本で、 / ek ˈset(ə)rə /の発音は dissimilationによるとの記載があるようです(Google Booksの検索でヒット)。

■ 声門閉鎖音 [ʔ]なら…

Seattle Learning Academyという英語スクールが運営する pronunciation.comというサイトによれば、「母音+/t/に摩擦音が後続する」という環境で、/t/が glottal stop(声門閉鎖音)[ʔ]に変化するという記述がありました:

Linking: /t/ as glottal stop /ʔ/
一番上の流れ (pet snake)を参照

LPDにも、以下の環境で声門閉鎖音 /ʔ/が /t/の異音として生じると説明されている:
  • 音節末であり、かつ
  • /t/の前の音が母音または共鳴音 (sonorant)
    • 例:outside / ˌaʊt ˈsaɪd / → / ˌaʊʔ ˈsaɪd /

ガリレオ自身の発音を自問してみると、例えば "It seems..."と言う時に /t/で舌先を通常どおり上歯茎に接触させるよりも、声門閉鎖を使った方が /s/への移行が楽に感じられました。
etc.は /t/でも /k/でも個人的には発音のしやすさにあまり変わりないような…σ(^_^;)

声門閉鎖音 /ʔ/と軟口蓋閉鎖音 /k/は異なりますが、口の奥側〜喉で閉鎖が作られるという意味では「似ている」と言っても良いでしょう。

暫定的な結論としては、「母音 + /t/ + 摩擦音」の環境で、/t/ → [k] ~ [ʔ]にした方が発音しやすいと感じる話者が存在する…という程度のことは言えそうです。

★Here is the Path to Wonderland☆

「渚にまつわるエトセトラ」に関わる重大な問題なので、Puffyを愛する英語学者としては放っておくわけにはいかないのです (v)○¥○(v)



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Saturday 9 December 2017

TOEIC頻出単語! address (動詞)

「宛先」と「ドレス」の意外なつながり

dress_address: 意外なつながり
We would be delighted to address any queries you may have.
「ご質問がありましたら何でもお気軽にお問い合わせください。」
=====
addressという単語は、名詞の「宛先・住所・メールアドレス」の意味では誰もが知っていると言って良いだろう。

一方、上に挙げたような動詞用法:「(質問・問い合わせなど)に応える」は案外知られていないようである。

【語源】

ad- "towards"「〜に」+ -dress "direct"「まっすぐに」
→ [名]: 配達先・宛先 / [動]: 〜に向けて直接ことばを向ける

"address (your) queries"「質問に応じる」といった表現は、ビジネスメールなどで目にすることも多く、TOEICでも頻出。「アドレス」から動詞の意味も導きやすいので、併せて記憶しておくと良い。

=====
語源で示した通り、dressは directと関連があるため、身に着ける dressも実は「まっすぐ」に由来している。

すなわち、「ピシッと(まっすぐ)整える」→「きちんと着せる」→「着せる行為・服」のような意味の成り立ちを持つ。

=====
一見すると似ても似つかない 2つの単語でも、語源を辿ってみると意外なつながりが浮かび上がることがある。

漢字でも、同じ部首を持つものに関連性が見出せるのと同様、英単語も「成り立ち」を意識すると共通イメージを元に記憶しやすくなる。

ぜひ、辞書を深く「読み込んで」活用しよう。

★Here is the Path to Wonderland☆

辞書は語義よりも語源欄や囲み記事が「宝の山」

ガリレオが発音に興味を持ったのも、中学生時代に学校推薦で買った英和・和英辞書に「発音記号の大体のイメージ( /uː/ はひょっとこの口で「ウー」など)」を解説したコーナーがあったの最初のきっかけでした(^o^)


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Friday 8 December 2017

英文法Q-A: The firefighters heard the windows breaking. → 尾崎くんのせいではない!

先日、以下の英文の breakingについて質問を受けました:
When the firefighters went into the building, they heard the windows breaking.
When the firefighters went into the building, they heard the windows breaking.

質問の趣旨は、「窓は勝手に壊れるのか?・何らかの外的要因によって『壊される』対象(= breakという行為の影響の受け手)なのだから brokenなのではないか?」というもの。

■ 自他交替(使役交替)のできる動詞について

結論から言えば、確かに窓が勝手に割れる状況というのは現実的ではないにせよ、上の例文では breakingが自然と考えられる。もっとも、brokenを用いて表すべき状況も考えられるが、窓が割れる原因について異なる想定が生じる。

図1に見られるように、breakfreezeといった動詞(能格動詞)は、「人や原因 (x)が対象 (y)に働きかけることで、対象 (y)が変化して結果状態 BROKEN/FROZENに至る」という意味構造を持つ。

すなわち、break「壊す」という行為が成り立つには、その対象は BROKEN「壊れる」という状態になっている必要があり、同様に freeze「凍らせる」と言うからには FROZEN「凍った」という結果状態に至らなければならない。

自動詞の意味構造(影山, 2001)
影山 (2001)『日英対象 動詞の意味と構文』p. 33 より

このような <行為・活動> → <変化> → <結果状態> の全てを自らの意味の中に含む動詞は、自動詞用法と他動詞用法の両方を持つ(自他交替または使役交替と呼ばれる文法現象)

影山 (2001)『日英対象 動詞の意味と構文』p. 34 より
  1. John broke my computer.(break: 他動詞用法)
  2. My computer broke.(break: 自動詞用法)
  3. 子供が障子を破った。(破る: 他動詞用法)
  4. 障子が破れた。(破れる: 自動詞用法)
2, 4で表される状況においても物理的には何らかの外的な原因があるのだろうが、言語表現としては「対象 (y)の変化」に強く注目して情報を伝えるものとなっている。

また、同じ「破る/破れる」という動詞でも、
  1. *{約束/世界記録/契約}が破れた。
とは言えないところから、2, 4では「コンピュータ・障子」という主語名詞句それ自体が持つ内的な性質が変化を引き起こしている(かのように見なされている)と考えることができる。

■ 「熱割れ」が原因であっても…

改めて冒頭の例文:
When the firefighters went into the building, they heard the windows breaking.
を考えると、この文の言わんとしていることは、「消防隊員が(火事の現場である)建物に入った時に、窓が割れる音を聞いた。」ということであろう。

火事場などで窓が割れるのは「熱割れ」と呼ばれる現象だそうで、物理的な外的要因は熱ということになる。しかし、ここでも「熱によって割れる」という窓ガラスの持つ内的性質に起因する状態変化に注目して情報を伝えたいのであり、熱の作用について語りたいのでない。

したがって、The windows broke.「窓が割れた。」という breakの自動詞用法を基にして "知覚V+O+~ing"(Oと~ingは SVの能動関係の構造に取り込むと、breakは現在分詞の breakingという形になる。

brokenを用いると?-尾崎くん(仮名)が登場

では、能格動詞の自動詞用法 (6)と受動態 (7)ではどのような違いがあるのだろうか?
  1. The windows broke.
  2. The windows were broken.
上で見た通り、6における窓の状態変化は、窓ガラス自体の内在的性質によって生じていると見なされる。裏を返せば、実際の物理的な行為者または原因は無視され、行為者/原因 (x) = 変化対象 (y)と同定されていることになる。

このことは、6に動作主を導く by句を別途つけ加えることができない事実からも示される:
  1. The windows broke (*by him / *by the heat).
一方で受動態の場合は、省略される場合こそあっても、動作主の存在は想定されている:
  1. The windows were broken (by him / by the heat).
したがって、もしも When the firefighters went into the building, they heard the windows broken. と言ったとしたら、"知覚V+O+p.p."(Oとp.p.は受動関係の構造において、窓は(明示されていないが)何らかの行為者または原因によって「割られた」のであり、消防隊員はその際に発生した音を聞いたことになる。

可能な解釈の1つには、そもそも the buildingが火事である必要すらなく、消防隊員が偶々そこに入った時に、盗んだバイクで走ってきた尾崎くん(15歳・仮名)によって窓ガラスが割られた音を聞いた…というものだってありうる(笑)

☆Here is the Path to Wonderland★

あいつが割ったんです!( ゚д゚)σ

【参考文献】
影山太郎(2001)『日英対象 動詞の意味と構文』,大修館書店,東京.



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